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第5回 2022/10/25 の4
人間社会は集団意識で変わるのか?
吾狼: 「人間社会も、その社会を構成している人たちの意識によって変化する」というのは、そんなにすんなりと受け入れられる話でしょうか? ぼくはそう簡単ではないと思っているんですよね。特に最近の世界情勢や日本の社会を見ていると。
幽大: おや、今度はイシコフさんより吾狼くんのほうが悲観論かね。
吾狼: 現世は個々の意識に紐づけされている別々の世界が複雑に重なり合っている多重構造だという最初の話に戻りますが、そうだとすると、だからこそ簡単には変えられないと思うんですよ。というのは、社会を本気で変化させたいという強い意志を持った人というのは、ものすごく少数だからです。ほとんどの人は、こうなればいいなという淡い希望や期待は持っていても、そうなると信じていないし、そういう方向に変えていくんだ! という強靱な意志は持っていないですよ。
幽大: なるほどな。だからこそ、悪知恵の働く少数の者によって簡単に支配され、洗脳され、利用される。まあ、人類史を見ればそれはその通りだろうな。
吾狼: いわゆるサイレントマジョリティというか、付和雷同型の人間が大多数を占めている以上、多重構造のほとんどの部分は変わらないでしょ。
イシ: 変わらない、というか、簡単に変わってしまうからこそ全体では変わらないということかもしれないね。言葉遊びのようになってしまうかもしれないけれど。
少数の支配者の意思で大多数の人間を動かせるという社会構造は昔から変わっていない。その結果、大多数の意識は簡単に変えることができるしコントロールできる。メディアツールが発達した
現代では、民主主義などというものは、支配者にとっては都合のいいシステムともいえるね。
吾狼: あと、個人の「こうなればいいな」という願望は、お金がもっと必要だとか、子供を有名大学に入れたいとか、異性にもてたいとか、そういうエゴイズムというか個人レベルの願望が主で、ついでに世界全体が平和であればいいですね、という程度のものなんですよ。
それは支配者層も被支配者層も大して変わらない。同じ穴のむじなというか、支配する側の欲望を支配される側も持っているからこそ従ってしまう。おこぼれにあずかれたらいいという心理が大きく働く。
結果、
個人レベルの願望を満たしていくと、結果として世界全体は破滅の方向に向かうんですよ。浪費や武力や金力による競争、他人の支配を生みますから。
幽大: 人間とはそういうものだ……と。だから、現世が破滅の方向に向かうのも人類が滅びるのも自然の成り行きだというわけかな。なんともつまらん結論じゃな。
個人の世界観は「世界」の一部
イシ: では、こういうのはどうでしょう。
私は子どもの頃、世界は自分の周囲の目に見えている範囲にしか存在していないんじゃないかという妄想にとらわれていたことがあるんです。知識が乏しい子供にとっては、目に見えるもの、手で触れられるものが世界のすべてですから。
ペンギンなんていないんじゃないか。北海道なんてないんじゃないか。アメリカなんてないんじゃないか。地球なんてないんじゃないか。そう思わされているだけなんじゃないか……と。
幽大: おうおう、余輩もその感覚は覚えがある。なんなら今もどこかでそう思っているかもしれん。
吾狼: ぼくもありました。そういう子供時代の記憶というか感覚。
イシ: